いろは動物病院における診療の進め方・考え方について

1.診療とは

診療とは、『診察』→『診断』→『治療』という、病気を治すための一連の行為を意味します。

適切な『治療』を行うには、的確な『診断』が欠かせません。

すなわち、病気を治すためには、まずどういう病気なのかを理解することが必要です。

苦しんでいる原因は何か、なぜこういう症状が出ているのかを明らかにすることで、

①最適な治療を選択することができ、

②今後の見通し(予後)を判断することができます。

そして、的確な『診断』を行うには、綿密な『診察』が欠かせません。

病気を理解するためには、発症に至るバックグラウンド(背景)を知ることが必要です。

動物は自分の病状を話すことができませんし、人間のように、自分の病気がどのカテゴリーに属するのか、つまり「内科」「外科」「耳鼻科」「眼科」「アレルギー科」などを判断・選択して来院することもできません。 

そこで、飼い主様からお話を伺う問診が非常に重要となります。

的確な問診によって、可能性のある疾患を絞り込むことができます。

「急性なのか、慢性なのか」

「初発なのか、再発なのか」

「持続性なのか間歇性なのか」

「緊急性があるのか」

「複数の症状がある場合、それらは関連しているのか」

などを判断するために、できるだけ詳しい情報を得ることが必要です。

『いつから?』

『どこが?』

『どのように?』から始まり、過去の病歴、発症にあたって心当たりの有無、日常生活の様子、食餌内容、室内飼育・室外飼育、同居動物の有無など、症状に応じて詳しくお伺いします。

 

次に触診、視診、聴診といった五感を活かした診察を行い、全身状態を把握します。

これらの結果を踏まえ、さらなる検査が必要かどうか判断します。

この段階で可能性のある疾患が複数リストアップされた場合、優先度の高いものから確定もしくは除外するために必要な検査を実施します。

優先度の判断には、もっとも可能性の高い疾患から調べていくだけではなく、たとえ可能性は高くなくとも、命に関わる疾患、緊急を要する疾患に関しては優先的に調べる必要があります。

逆に、優先度の高くない疾患を全て調べることは、動物への負担を強いるばかりではなく、飼い主様の経済的負担にもなりますので、現時点では一部の検査は見送るという判断に至る場合もあります。

また、検査の実施にあたっては、検査の意義や必要性をご説明し同意を得た上で、動物にとって負担の少ないもの、実施しやすいものから順次実施していきます。

なお、MRIなど高度医療機器を用いた検査が必要と判断した場合は、専門病院と連携して検査・治療にあたることとなります。

2.診察から診断へ

実施した検査の結果によって、以下のように判断します。

①特定の疾患が確定

②特定の疾患が除外

③特定の疾患が疑われるが確定には至らない

①は、確定診断がつき、病名がはっきりした状態です。

まずは、飼い主様にどういう病気なのか、どのような治療法があるのか、また今後の見通しについてご説明した上で、治療方針を決定し、その疾患に適した治療に入っていきます。

②の場合、除外された疾患以外に、可能性のある疾患が複数残っている場合、再び優先度の判断を行った上で、必要に応じて追加検査を行い、さらに疾患の絞り込みを行います。

逆に、疾患の除外によって、可能性のある疾患が1つしか残っていない場合、その疾患である蓋然性が高いと判断します。これを除外診断といい、疾患によってはこの除外診断によってしか診断できないものもあります。

また、確定診断に至らないまでも、重要な疾患が除外されたため、ある程度の治療の方針が立てられる場合は、追加検査は見送り、まずは最も可能性の高い疾患に対する治療を行います。これを診断的治療といい、治療に対する反応から診断を下すという、通常とは逆の診断法となります。

 ③では、確定診断をつける必要がある場合、さらなる追加検査を実施します。

しかし、これ以上確定診断をつける必要がない場合や、現在の獣医療では確定診断の方法がない疾患の場合は、仮診断の状態で、治療に入っていくこともあります。

以上のステップを経て診断がつくと、次は治療に移ります。

3.治療方法について

さまざまな治療方法がありますが、それらは治療目的によって以下の2つに分類することができます。


①原因療法(根治療法):病気の原因を取り除く治療方法

②対症療法(緩和療法):病気の症状を和らげ、苦痛を軽減する治療方法

もちろん原因療法が理想的ですが、原因の除去が困難な場合は、対症療法により症状を軽減することで動物の持つ自然治癒力を促進できる場合もあります。また、疾患によっては、原因療法の効果が現れるまで対症療法を併用する場合もあります。

 

4.治療方針の決定:クォリティ・オブ・ライフとは

その疾患に対して、どのような治療法が選択できるのか、有効性や副作用などを総合的に勘案し、個々のケースに応じて、最も適した治療法、治療方針を決定していきます。

 

治療方針を決定するにあたって当院が重視しているのは、私たち獣医師が一方的に決めるのではなく、かといって飼い主様に全てを決めてもらうのでもなく、獣医師と飼い主様がともに考える医療です。

人間のように患者本人が意思を表すことができない動物医療においては、飼い主様と獣医師が手を携えて動物の気持ちを理解しようと努力し、その苦痛を和らげるためにできる最善の治療をともに考えていくことが何より重要となります。

しかしながら、ある動物にとって最善の治療が、他の動物にとって常に最善であるとは限りません。

では、『最善の治療』とは何でしょうか。

 人の医療では、クオリティ・オブ・ライフ(Quolity of Life;QOL)と言われる概念があります。

これは、自分らしい生活を送り、そこに幸福を見出しているかを尺度として捉える、というものです。

つまり、いくら病気を治しても、そこに幸福を見いだせない、自分らしくない生活を余儀なくされる場合、クオリティ・オブ・ライフは低下したことになります。

当院では治療方針を決定するにあたって、このクオリティ・オブ・ライフの概念を取り入れ、この治療を行うこと(もしくは行わないこと)が、この動物のクオリティ・オブ・ライフにどのように影響するかを重要な判断基準としています。

また、動物とともに暮らす飼い主様にとってのクオリティ・オブ・ライフも重要と考えます。

しかしながら、いずれの治療法によっても、クオリティ・オブ・ライフの維持が難しい疾患もあります。

そのような場合、獣医学的見地からみた客観的な病状を踏まえつつ、動物の苦しみを和らげるためにできる『最善の治療』を、動物の最も身近な代弁者である飼い主様とともに考えていくことになります。

これまで一緒に暮らす中で培ってきた動物と飼い主様との強い絆が、動物にとっても、飼い主様にとっても『最善の治療』に導いてくれると信じております。

5.インフォームド・コンセントについて

これまで述べてきたように、検査の実施や治療方針の決定にあたっては、インフォームド・コンセント(十分な説明と同意)が診療の根幹となります。

飼い主様への説明にあたっては、難解な医学用語は極力用いず、平易で日常的な言い回しをするよう配慮するとともに、当院オリジナルの院内資料、ホワイトボード、カラー写真、イラスト、図表、専門書などを活用し、分かりやすい説明を心がけております。

それでも分かりにくい場合や、一回聞いただけでは理解できないといった場合は、遠慮なく仰ってください。飼い主様にご理解いただける説明をすることが私たちの仕事ですので、私たちの説明する力が日々進歩していけるよう、至らない部分は随時ご指摘いただければ幸いです。


ただし、一刻の猶予も許されない緊急状態の場合には、十分な説明をする時間がとれないこともあります。その場合には、優先して緊急処置を実施し、生命の危機を乗り越えた時点で改めて詳しいご説明をさせていただくことになりますので、ご了承下さい。 


なお、通常の診療時間内では十分な時間が取れない場合や、動物が一緒だと落ち着いて話をするのが難しい場合には、別途、説明の時間を設定し、改めて飼い主様だけご来院いただくこともあります。

こちらからご提案することもありますが、ご希望があれば遠慮なく仰ってください。

Tel: 0774-46-9099

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